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Q2.
祖父が亡くなりました。
相続人である父は現在行方不明なのですが、父の代わりに自分が相続することは可能でしょうか?
また、相続した後に、父が見つかった場合、もしくは死んでいることがわかった場合、どうなりますか?

父について遺産分割を申し立てることで、あなたが祖父を相続できる可能性があります。ただし、遺産分割後に父が見つかった場合には、相続した財産を返還しなければならないかもしれないことに注意が必要です。

相続人に行方不明者がいるときの遺産分割の進め方

祖父が亡くなり、父が行方不明の場合でも、相続人はあくまでも父です。ご相談者は、そのままでは祖父を相続することはできません。

相続人の中に行方不明者がいると、多くの場合は法的な対処法が必要となります。

遺産分割協議は全員で行う必要がある

遺産分割協議をする場合は、相続人全員で協議しなければなりません。1人でも参加しなかった相続人がいると、その遺産分割協議は無効となります。

したがって、相続人の中に行方不明者がいる場合、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。

もっとも、相続人が父のみという場合は遺産分割協議を行う必要はありません。

ただし、その場合には行方不明の父が相続した遺産を、誰がどのように管理するのかといった問題が生じます。

行方不明者がいるときの対処法

相続人の中に行方不明者がいる場合に遺産分割を進める方法には、以下の3つがあります。

  • 行方不明者の所在を調査して連絡を取る
  • 失踪宣告を申し立てる
  • 不在者財産管理人を選任する

以下で、それぞれの方法について詳しくみていきましょう。

行方不明者の所在を調査する方法

まずは、行方不明者の所在を調査することが必要です。最低限、戸籍の附票を取り寄せましょう。戸籍の附票を見れば、本人の最終の住民票上の住所地がわかります。

戸籍の附票は本人の本籍地の役所で取得できます。郵送での取得も可能です。本人の配偶者、親、子など、必要とする正当な理由があれば申請できます。

行方不明者の戸籍の附票は、失踪宣告や不在者財産管理人の選任を申し立てるときにも必要となるので、最初に取得しておくべきです。

所在調査の結果、父が亡くなっていることが判明した場合は、ご相談者が父に代わって祖父を相続します。

このとき、他にも相続人がいる場合は、あなたが父に代わって遺産分割協議をすることになるでしょう。

ただし、父と祖父の死亡の先後により進め方が異なる場合があります。

父が生存していて連絡がとれた場合は、父が相続します。

生存していても連絡がとれない場合や生死不明の場合は、他の方法で遺産分割を進めることが必要です。

失踪宣告を申し立てる方法

父が行方不明となってから一定の期間が経過している場合は、失踪宣告を申し立てるによって遺産分割を進めることができます。

失踪宣告が認められると行方不明者は死亡したものとみなされるので、ご相談者が祖父を相続できるようになるのです。

一般的には、本人が行方不明となってから7年が経過したときに死亡したものとみなされます。災害や事故など死亡の原因となるような危難に遭遇して行方不明となった場合は、その危難が去ってから1年が経過したときに死亡したものとみなされます。

申立先は、行方不明者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申し立ての際には失踪を証明できる資料を提出しなければならないので、戸籍の附票を取り寄せるほか、可能な限りの所在調査を行っておく必要があります。

不在者財産管理人を選任する方法

父が行方不明となってから7年(危難に遭遇した場合は1年)が経過していない場合は、失踪宣告の申立てはできません。

そのままでは遺産分割を進めることができないので、不在者財産管理人を選任することが必要です。

不在者財産管理人を選任するには、行方不明者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。

相続に利害関係がある人は不在者財産管理人となれないので、多くの場合は地元の弁護士や司法書士の中から選任されます。

弁護士や司法書士が不在者財産管理人となった場合は、報酬が必要となることにもご注意ください。

一般的には、家庭裁判所に申し立てる際に数十万円程度の予納金を求められます。

不在者財産管理人による遺産分割協議

不在者財産管理人には、基本的には不在者の財産を管理する権限しかありません。しかし、家庭裁判所から権限外行為の許可を得て遺産分割協議を行うことが可能です。

この場合、父の相続分が法定相続分を下回るような内容で遺産分割をすることは原則として認められません。これでは、不在者財産管理人が父の財産を適切に管理することにならないからです。

父が相続した遺産は、不在者財産管理人が預かり保管します。その後、父が行方不明となってから7年(危難に遭遇した場合は1年)が経過すれば失踪宣告の申立てが可能となります。

帰来時弁済型の遺産分割

不在者財産管理人の権限外行為として、状況によっては帰来時弁済型の遺産分割を行うことが認められることもあります。

帰来時弁済型の遺産分割とは、行方不明者を除く相続人で遺産を分けますが、後に行方不明者が現れた場合には、その法定相続分に相当する金銭を支払うことを取り決めるという遺産分割の方法です。

ただし、遺産を取得する人の資力が十分でない場合や、相続財産が高額な場合は、帰来時弁済型の遺産分割は認められにくい傾向にあります。

相続後に不在者の行方が判明したらどうすればよい?

失踪宣言などにより祖父の遺産分割をした後に父の行方が判明した場合は、以下のように対処する必要があります。

不在者が生きて現れた場合

失踪宣告の後に父の生存が判明した場合、失踪宣告が取り消されます。したがって、父の相続権が復活します。

この場合は、手元に残っている遺産を父に返還する必要があります。生活費や遊興費、その他の用途に消費してしまった分については、弁済する必要が無くなる場合もあります(民法32条2項但書)

不在者財産管理人を選任して通常の遺産分割を行った場合は、不在者財産管理人が預かっている遺産を父がそのまま取得します。

帰来時弁済型の遺産分割を行った場合は、遺産を取得した人が父に対して法定相続分に相当する金銭を支払わなければなりません。この場合、手元に残っている分だけでなく既に消費した分も弁済する必要があることに注意が必要です。

不在者が死亡していた場合

失踪宣告で推定された死亡時期と異なるときに父が死亡したことが判明したときも、失踪宣告は取消しとなります。

ただし、ご相談のケースでは既に行った遺産分割が失踪宣告の取消しによって影響を受けることはありません。

不在者財産管理人を選任していた場合は、不在者の死亡が判明すると財産管理業務が終了します。

ただし、有効に成立した遺産分割は撤回されません。父が取得するはずだった遺産は、子であるご相談者が相続することになります。

まとめ

祖父が亡くなったときに父が行方不明となっている場合、祖父の遺産を勝手に処分すると、他にも相続人がいればトラブルとなる可能性があります。

必ず父の所在調査を尽くした上で、生死が判明しなければ失踪宣告または不在者財産管理人の選任を申し立てた上で、遺産分割を行いましょう。