弁護士法人名古屋総合法律事務所
金山駅前事務所
弁護士 楠野 翔也
不倫が原因で離婚になった場合の離婚と離婚に伴う条件に与える影響について説明いたします。
配偶者が不貞行為をしたことを知った場合、まずは、不貞行為をした配偶者及び不貞相手に対し、慰謝料を請求することが考えられます。
そして、不貞行為は、夫婦間の信頼関係を失わせますので、離婚を検討される方も多いと思います。
その場合には、配偶者が不貞行為をしたことを踏まえ、慰謝料以外にも、以下の項目に関し、どのような内容とするかを検討する必要があります。
本稿では、①から③の項目について、配偶者の不貞行為が、慰謝料以外の離婚条件に与える影響を説明させていただきます。
④から⑦の項目については、不貞行為が離婚に与える影響-2をご確認ください。
配偶者と話し合い、離婚について合意し、離婚届を提出すれば、離婚をすることができます。
離婚の合意ができない場合には、協議や調停をします。
それでも合意が難しい場合は訴訟で、離婚することを求めることになります。
民法には、離婚が認められる法定離婚事由が定められており、その中には、「配偶者に不貞な行為があったとき。」(民法770条1項1号)と定められています。
そのため、訴訟において、配偶者が不貞行為をしたことを立証することができれば、離婚が認められる可能性が高いです。
それでは、不貞行為をした配偶者から離婚を求められた場合にも、訴訟において、離婚が認められるでしょうか。
不貞行為をした配偶者が、婚姻を破綻した原因を作っています。
そのような有責配偶者からの離婚請求を簡単に認めてしまっては、離婚を求められた側からすれば、いわゆる「踏んだり、蹴ったり」です。
そのため、原則として、離婚は認められません。
もっとも、既に破綻している婚姻関係をずっと存続させることも難しいですので、裁判所は、例外的に、以下の要素を考慮し、有責配偶者からの離婚を認める場合があります(最大判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁)。
どちらが親権者となるかの争いがある場合、離婚訴訟における親権者の指定に関しては、概ね、以下の8つの要素を考慮し、どちらが親権者になった方が、子の利益、子の福祉に適うかという視点から、親権者が定められます(民法766条1項、民法820条)。
不貞行為に関しては、④親権者の適格性として主張される場合があります。
不貞行為があった場合でも、子の監護養育に関してはしっかりと対応している場合も多いため、不貞行為があったことのみで、親権者として不適格であるということはできません。
そのため、不貞行為をした配偶者が、「親権者として不適格である」と指摘する場合には、不貞行為の事実を立証するだけではなく、子の養育が疎かになっていたという事情や子の心身等に悪影響を及ぼしているといえる事情等を詳しく主張・立証していくことが必要になります。
夫婦には、生活保持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務)があります。
別居後であっても、原則として、離婚するまでの間、収入の多い側から、収入が少ない側に、婚姻費用を支払う必要あります。
通常の場合には、家庭裁判所おいて活用されている算定表、標準算定方式等を参考にして、金額が定められます。
もっとも、婚姻費用分担義務は、夫婦の協力義務を基礎に認められています。
その義務に違反した配偶者が、他方の配偶者に対し、その履行を求めることは信義則に反する場合があるため、その有責性の程度により、婚姻費用が、減額又は免除となる場合があります。
そのため、別居のきっかけが、主として、婚姻費用を請求する側の不貞行為である場合には、費用の減額又は免除が認められる可能性があります。
また、婚姻費用を請求する側が、未成熟子を監護している場合には、子供の監護費用相当分(養育費相当分)も、婚姻費用に含まれます。
不貞行為に関し、子には何も責任はありませんので、配偶者に対する婚姻費用相当分までの減額は認められる可能性はありますが、少なくとも、子の監護費用相当分(養育費相当分)についての婚姻費用の減額は認められません。
そのため、養育費を支払わないといけない子がいる場合には、子の監護費用相当分(養育費相当分)の婚姻費用は少なくとも支払う必要があります。