弁護士法人名古屋総合法律事務所
金山駅前事務所
弁護士 楠野 翔也
不倫が原因で離婚になった場合の離婚と離婚に伴う条件に与える影響について説明いたします。
本稿では、④から⑦の項目について、配偶者の不貞行為が、慰謝料以外の離婚条件に与える影響を説明させていただきます。
①~③については不貞行為が離婚に与える影響-1 をご確認ください。
子に対する生活保持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務)を根拠として、離婚後に未成熟子を監護しない親は、未成熟子を監護する親に対し、養育費を支払う必要があります。
通常の場合には、家庭裁判所において活用されている算定表、標準算定方式等を参考にして、金額が定められます。
算定表について詳しくは裁判所のHPを御覧ください。
養育費は、子の生活保持のための費用であり、不貞行為に関し、子には何ら責任がありませんので、不貞行為を理由とする養育費の減額や免除は、認められません。
子を監護していない不貞行為をした親から、子を監護する親に対し、面会交流を求める場合、面会交流を拒否する理由となるのかが問題となることがあります。
子を監護している親が、不貞行為をした配偶者を信頼できないという心理状態になることは、理解することができます。
しかし、面会交流は、子の利益、子の福祉のために実施するかどうかを決めるべきものです。
不貞行為という事実があっても、子の利益、子の福祉に反するという事情がない限り、原則として、面会交流は認められることになります。
もっとも、面会交流を実施していくためには、子を監護する親の協力が不可欠であり、具体的な事情をもとに、面会交流の実施方法を決める必要があります。
そのため、子を監護していない不貞行為をした親は、自らが夫婦間の信頼関係を失わせてしまったことを自覚し、子を監護する親に面会交流を実施する協力をしてもらえるように、真摯に話し合いをすることが望ましいです。
財産分与は、主に、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を清算するものです。
財産分与を求める配偶者が不貞行為をした場合でも、財産分与を求める権利は失われません。
そのため、通常通り、財産分与をする必要があります。
離婚慰謝料は、財産分与と別個に請求することもできますし、財産分与に含めて請求することも認められています(最判昭和31年2月21日民集10巻2号124頁)。
もっとも、両者は、本質的には、別の請求権ですので、別個に請求する場合が多いです。
年金分割とは、夫婦が離婚する場合に、結婚から離婚までの厚生年金と共済年金の保険料納付記録を分割することができる制度です。
年金分割は、結婚から離婚までの年金の保険料納付に対する寄与の程度は、互いに同等であるとして、按分割合については、0.5(2分の1)が相当であると判断されます。
例外として、夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような事情がある場合は別ですが、裁判例を踏まえても、特別の事情が認められることはほとんどありません。
按分割合を0.5以外とする判断がなされる可能性は、ほとんどありません。
少なくとも、不貞行為があったことのみで、特別の事情に当たるとは、考えられていません。
そのため、不貞行為があったことを理由に、年金分割の按分割合が変わることはないと考えておいた方が良いです。
配偶者の不貞行為が、慰謝料以外の離婚条件に影響を与えるかどうかについて、説明させていただきました。
影響を与える項目、影響を与えない項目の両方がありますので、その点を踏まえて、離婚手続きを進める必要があります。
もっとも、法律問題は、個別具体的な事情をもとに、判断が変わる場合も多いです。
そのため、実際に離婚をしようと考えた場合には、離婚をする前に、弁護士に相談をしたうえで、どのように進めるかを決めることをおすすめいたします。